慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科
MAUI Project
博士論文

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学位取得年度 2002年度
氏名 重近 範行 (SHIGECHIKA, Noriyuki)
論文題目 実時間イベントにおけるコミュニケ−ション環境の設計
論文要旨

本研究では,1994年からインターネットを利用したイベントにおけるコミュニケーション環境を実現してきた.ここでは,イベントの前,イベント期間中,イベント後というイベントのライフサイクルをとらえた,"時間の流れに伴う連続性",コミュニケーションの"双方向性",そして,コミュニケーションの"規模"に着目した情報システムとしての設計をおこない,実際のイベントにおいて運用し評価した.結果として,既存のメディアでは実現できない多くの知的活動の支援をインターネットを利用して実現した.

公演的な授業やコンサートなどのスタイルのイベントでは,多くの観客に対しステージから一方的に情報を伝えるテレビ番組と同じような単方向のコミュニケーションシステムが必要となる.しかし,実時間イベントでは,1つの空間を観客とステージが共有していることにより,拍手や歓声など臨場感を創り上げる重要なコミュニケーションが観客からステージに対しておこなわれる.これは,イベント参加者が,あらかじめ予期された表現手法を用い,予期された自由度を持った形で実現される双方向コミュニケーションであるといえる.本研究では,まず,この双方向コミュニケーションで定義できるモデルをインターネット上にシステムとして実現し,考察をおこなった.インターネット上では観客数の規模の許容度が大きいことが特徴で,このことは,観客からの表現形式の抽象度として解決した.

実際のイベントでの場は観客から発生するコミュニケーションは「拍手」のように抽象化された均一の方法での類型的なコミュニケーションばかりではない.この視点をシステム化するために,実時間イベントの本来の目的である演者が観客に対しておこなう類型的な非対称コミュニケーションを"Inbandコミュニケーション",実時間イベントへの参加において非常に重要な要素である熱気など臨場感を創り上げるあらゆるコミュニケーションの要素を"Outbandコミュニケーション"とするモデルを提案した.

実時間イベントにおけるインターネットを含めた場の共有のシステムを,イベントにおいて観客が現場にいるのか,インターネット上から参加しているのかに関わらず,多対多型のリアルタイム双方向コミュニケーションがOutbandコミュニケーションとしておこなわれることによって実現した.1対多・多対多のリアルタイム双方向コミュニケーションをインターネット上で実現するためには,抽象度の高い情報形式を表現手法とする必要がある.しかし,同時に個人ごとの個別の表現を可能とする強い要求もある.こうした問題をコミュニケーションの"参加可能性"と"透明性"という視点で分類し,インターネットの特長を利用して,高度な参加可能性と透明性を持ったOutbandコミュニケーション環境を実現するGayaシステムの設計・実装をおこなった.本システムを利用した複数の実験により,実時間イベントへのインターネットを含めた手段による参加を可能とする新しいコミュニケーションシステムの効果を実証し,実時間イベントにおける場の共有のためのコミュニケーション環境を実現した.

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nazo@sfc.wide.ad.jp


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