慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科
MAUI Project
博士論文

[ English | Japanese ]
Back to Index Page

学位取得年度 2011年度(2012年2月1日)
氏名 鈴木 茂哉 (SUZUKI, Shigeya)
論文題目 情報可搬型RFID情報システム
論文要旨

本研究では,Internet of Things や Cyber-physical system などのように,実空間から生み出された情報を扱う情報システムにおいて,“情報の配置”に着目することにより効果的な処理が可能となる情報可搬化パラダイムを提案する.

インターネットは,Internet of Things や Cyber-physical system にみられるように,情報空間と実空間との連携を深めている.実空間情報を扱う実空間情報システムでは,実空間との接点となるセンサやアクチュエータといった構成要素(コンポーネント)の存在が,既存の情報システムとの大きな違いである.これら実空間との接点となるコンポーネントは,センシングあるいはアクチュエーションする対象によりその実空間中の位置が決定される.そしてこのコンポーネントの実空間中の位置は,情報空間を構成する情報システムのコンポーネントの配置に強い影響を及ぼす.

実空間情報システムをそのコンポーネントの配置に着目し整理すると,情報の“生成”,“保存”,“処理”,“消費”に関わるそれぞれのコンポーネントが実空間中に分散されることから,ネットワークに依存した集約型,分散型,ネットワークに依存しないが必要に応じて利用する独立型の三種類に分類できる.既存の集約型と分散型の情報システムは,情報をあらかじめ決められたサーバに集約する,クライアント・サーバ型アーキテクチャの形態で実現されているものが多い.

インターネットを基盤とした実空間情報システムでは,実空間中の遠隔にある2つのコンポーネント間の通信に着目する必要がある.それぞれのコンポーネントが近傍にある場合と比べ,遠隔にあるコンポーネント間の通信における通信所要時間や信頼性は,システム全体に大きな影響を与える.既存の実空間情報システムでは,実空間的なコンポーネントの配置によってもたらされるシステム上の特性に対して十分な考慮がされておらず,性能や信頼性において熟慮されたシステムとは言いがたい.

より多くの応用が可能で,より分解能が高い実空間情報を扱うためには,既存の単純なクライアント・サーバ型のアーキテクチャにとらわれず,より効率の高いシステムを実現する必要がある.すなわち,実空間との接続点となるコンポーネントの配置を意識し,通信を最適化する新しいアーキテクチャが必要である.

本研究では,実空間情報システムのコンポーネントの一つである実空間と情報空間の接続点となるコンポーネントと,それぞれの近傍にある情報を保持するコンポーネントに着目する.そして,複数の接続点近傍の情報保持コンポーネントのうち,“情報が利用される可能性”という見地で最も適したコンポーネントに情報を移動することにより,情報を保存あるいは活用するコンポーネントとの間の距離を近接化する“情報可搬化パラダイム”を提案する.この提案では,今まで移動することを前提としていなかった情報をあえて移動させることにより,システム全体の最適化を可能とした.

具体的な情報可搬化パラダイムの適用対象として,RFID情報システムを選び,その課題を明らかにした後,コンポーネント間の信頼関係の確保の信頼できる第三者の存在しない環境での実現,RFタグのユーザメモリに記憶された情報の完全性の担保の実現,実空間中で移動する物品にあわせて情報を最適配置するリポジトリアーキテクチャの実現を通し,“情報可搬化パラダイム”の有効性と実現性を示した.

連絡先 本文が必要な場合は下記までご連絡ください。
鈴木 茂哉 ( shigeya at sfc.wide.ad.jp )


Copyright 2000, MAUI Project
Last update:

研究会のホームページに戻る