The Nightfly:DONALD FAGEN 1982

サウンドチェックというタイトルにしておいて このアルバムについて書かないというのは

近代日本について語る時に 天皇制に触れないとか
ストーリー漫画の話をするときに手塚治虫を忘れるとか もうそういうことなのかも

1曲目の「I.G.Y.」が ThinkPadのCFに使われちゃったので
アップル関係のイヴェントではチェックに使えなかったなんて言う噂もあった

それくらい みんなが当たり前に使ってるのだ


んで なーにがそんなに良いのですか? と よく訊ねられる

模範的な答えとしては

周波数的にも 定位の上でも パートごとの音の配置が完璧である
ドナルド・フェイゲンの声に癖があって 中〜高域のチューニングに良い

なんてのがあろうかと思う

もちろん曲もいいし 演奏は折り紙付きだから ハッピーに仕事が出来る


僕らの一世代上のエンジニア達は ほぼ100%この曲をチェックに使っていたように思う
だから僕も なんの疑いも無くこの曲をかけることからチェックを始めていた

実はこのアルバム そのころの基準をもってしても音は良くなかった
いやいや 総合的にはいまだに超名盤だと思うよ
ただ オーディオ的には いまいちクリアじゃないし 低域も足りない
アナログテープ独特のくぐもり感も少し気になる


ほんとのところ どうなんでしょ?
駆け出しの僕は考えた 先輩達にインタヴューしてみたりね

このアルバムに限らず スティーリー・ダンというひとたちの音はマニアックだ
(スティーリー・ダンはドナルド・フェイゲンとウォルター・ベッカーのユニットだよ)
かなり聞き込んでいないと聞こえてこないリフがあったり
ものすごーく高級な仕掛けがしてあったりする

そのくせイージーに聞き流すことも出来る
チェック中もほかのスタッフがメロを口ずさんで通り過ぎたりする

わかっちゃった...
そのときエンジニア達は プロである優越感にひたれるのだ
ホントにわかってんのかねー って

そのことに気づいてしまったとき なんだかいやーな気分になった
ぺっぺっ って感じ もちろん身に覚えがあるからなんだけど(鬱...)

だけど やっぱり現場ではこれをかけてしまう

次の現場でも きっと最初に流れるのは あのイントロだろうと思う
ビンボ臭い優越感を発見した折の あのホロニガの気持ちを忘れないためにも


なんて...


もうはっきり言ってしまおう I.G.Y.が流れないと 体が動かないんだよ...
ラージラテ(エスプレッソ++)を携えて現場に現れるのと一緒なのよ

だから あんまり突っ込まないでね
 
 
 
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