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フェイトさん

先週末、本屋兼雑貨屋に行った時に、何気に目に留まった「監督不行届」を読んだ。マンガ界の寵児、安野モヨコが、夫である庵野秀明の奇行ぶりと、それに染まっていく自分、そして二人の結婚生活について書いたマンガエッセイである。

多分にフィクションも含まれているだろうが、とにかく面白い。庵野秀明の清々しいまでの収集癖・執着癖・そしてマニア魂。それを最初否定していた安野モヨコが、だんだんと夫庵野秀明に感化されていく様子。面白おかしく書かれている中に、案野モヨコの視点から確かな愛情が感じられるところが良い。そして巻末に寄せられた庵野秀明のコメントからも、愛する妻への賛辞の間からほんわかした愛情が感じられる。

庵野秀明といえば、「エヴァンゲリオン」の監督として時の人となった有名人。日本映画史上に燦然と輝く「王立宇宙軍」を作成したGAINAXのコアメンバである。

「監督不行届」を読んでいて、「そういえば...」という感じで思い出したことがあった。庵野監督の作品「ふしぎの海のナディア」の一場面、フェイトさんが出てくるシーンである。何度思い出してもちょっと胸に迫るものがある。

「ふしぎの海のナディア」は、ジューヌ・ベルヌの「海底二万海里」をモチーフに、庵野秀明が大胆なアレンジを施し、ボーイ・ミーツ・ガール的なラブロマンスと、けれん味たっぷりな壮大なSFと往年のアニメーションに対するオマージュ的なコメディが詰まった傑作である。が、この作品のストーリラインは他のWEBページに譲るとして...

フェイトさんである。

既に記憶もあやふやだったが、主人公達の乗る潜水艦(ノーチラス号)が、敵の攻撃を受け、毒性のガスが艦内に漏れ出したため、犠牲者を最小限に食い止めるべく、艦長のネモ船長は居住ブロックの一部を破棄し、内部に残っている生存者もろともシェルタで閉鎖するシーンが取り上げたい部分である。

その中にフェイトさんがいるのである。

中に生きている人間が居ることをしった主人公の少女はネモ船長を激しくなじる。しかし、フェイトさんはそんなネモ船長の判断は正しいとかばい、みんなのために自分が犠牲になるのはしょうがないことなんだ、と死を目前にしながら冷静に子供達に話しかけるのである。

(この人、かっこよく死んでいくのかなぁ...)と、みている誰もが思っている。

と、僅かな空白の時間の後、猛然と「俺はまだ死にたくない!! 自分はまだ生きたい!! 自分にはまだやりたいことがあるんだ!!」と叫び、ドアを激しく叩き出すのである。艦内にその慟哭が幾重にもこだまし、やがて、無音となる。

死を目前にした際のリアリズム。本能的に生にしがみつく人間の姿。

これを子供向けのアニメーションとして、NHKで、放送した庵野秀明。
やっぱり凄い才能の持ち主だと思う。

コメント (3)

非常勤孔子:

そうそう。
フェイトさんの声は関俊彦だったんだよね。
1回だけの単発ゲストみたいな感じで。
あのいまわの際の絶叫は、今でも耳に残ってるよ。

peace.

saikawa:

さすが、やるなぁ。コメントが渋い(笑)。

ks91:

「ナディア」を観ていないのでフェイトさんの話というのは初めて聞きましたが、そのネーミングはもしや!

モエラ! (moira = ギリシア神話で運命の女神)

(「監督不行届」読みました。大笑いしましたが、笑えません… ^^;)

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2005年02月17日 02:56に投稿されたエントリーのページです。

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