慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科
MAUI Project
博士論文

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学位取得年度 2016年度
氏名 永山 翔太 (NAGAYAMA, Shota)
論文題目 Distributed Quantum Computing Utilizing Multiple Codes on Imperfect Hardware
不完全なハードウェア上での複数の符号を用いる分散量子計算
論文要旨

量子ビットの原理的・技術的な不完全性を解決するには,量子計算リソースが必要である.しかし,一つの部品に実装可能な計算リソース量は限られている.したがって,量子コンピュータが規模や性能において飛躍的な発展を遂げるためには,量子コンピュータによる分散処理を実現しなければならない.

本研究では,多数の量子CPU や量子メモリを耐不完全性を考慮して設計・接続し,分散処理により計算リソースを確保して,実用的な規模の問題を解ける量子コンピュータアーキテクチャを構築する.本アーキテクチャでは,計算リソースを節約するために部品毎の役割を明確化し,各役割に適切な量子エラー訂正符号を採用する.

本研究は以下に述べる三つの成果から構成される.まず,エラー訂正符号に着目し,未解決の不完全性だった不良量子ビットへの対応手法を開発した.シミュレーションにより本手法のエラー訂正能力を検証し,消費計算リソースの増加量を明らかにした.この結果,量子ビットの正常動作率が九割の環境では,生産した計算チップの50%が実用可能であると判明した.また,動作率八割では,10%も実用できない事が分かった.

次に,異なる量子エラー訂正符号を用いる部品間を,耐不完全性を考慮して繋ぐ接続手法を開発した.本手法は,単一量子コンピュータ内の量子部品の接続に加えて,異なる量子エラー訂正符号を用いる量子デバイス間の相互接続を実現する.本手法の有効性を検証するため,シミュレーションにより,必要な計算リソース量を明らかにした.この結果,エラーを訂正するよりも,エラーが発見された通信リソースを廃棄するエラー管理方法が,本接続手法に適している事が分かった.

さらに,メモリ向きの新しい量子エラー訂正符号を開発した.計算の結果,本符号は,従来のエラー訂正符号の二倍の空間効率で量子メモリを構成出来る事が分かった.

これらの研究により,量子コンピュータの相互接続によるネットワーク型分散コンピュータを構成する要素が整った。これらを組み合わせ,実現可能な分散量子コンピュータアーキテクチャを提案する.

キーワード: 量子コンピュータアーキテクチャ, 分散量子計算, 量子エラー訂正符号, Surface Code 量子計算, 不良量子ビット, 量子エラー訂正符号変換

連絡先 本文が必要な場合は下記までご連絡ください。
永山 翔太 ( kurosagi at sfc.wide.ad.jp )


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