慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科
MAUI Project
博士論文

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学位取得年度 2004年度
氏名 関谷 勇司 (SEKIYA, Yuji)
論文題目 大規模かつグローバルなインフラストラクチャの運用基盤分析に関する研究
論文要旨  本研究では,大規模かつグローバルなインフラストラクチャの運用基盤分析に関する手法を提案し,実践することによって検証した.本研究が定める大規模かつグローバルなインフラストラクチャとは,世界規模のサービス範囲を有し,サービス拠点が自律分散,協調してひとつのサービス空間を構成するようなインフラである.

 現在では,インターネットに代表されるような大規模かつグローバルなインフラストラクチャが身の回りに増加している.例として,位置情報システムの GPS や世界規模の携帯システムである GSM,インターネット上で展開される Web やDNS といったサービスをあげることができる.

 このような自律分散型の情報通信インフラストラクチャは,急速に社会基盤として確立し,その信頼性や健全な運用性への極めて厳しい要求が生まれている.一方、このようなインフラストラクチャは,大規模に分散し,かつ,自律的な機能が相互に作用しながら運用されているために,その全体の運用状態を把握することは困難であった.現状では,システムとしての障害が発生すると,その発生の事象を元に障害を修復するという手法でシステムは復旧される.このようなリアクティブな障害復旧のプロセスは,比較的変化の小さい静的な運用環境では,障害箇所の追求を確定的に実現できるため効率的である.しかし,上記の例のような大規模な自律分散システムは動的に運用規模や運用状態が変化することが多いために,障害箇所の追求の時間も増加する.

 本研究では,大規模かつグローバルなインフラストラクチャの事例としてとしてDNS を取りあげ,DNS の運用基盤分析を行うためのモデル定義と手法の確立を行った.さらに,本研究の手法を適用することにより,DNS の運用状態を分析することが可能であることを検証した.その結果,大規模かつグローバルなインフラストラクチャの運用基盤分析を行う際に有用である分析モデルを確立することができた.

 本研究では,まず大規模かつグローバルなインフラストラクチャというものを定義した.その中において,インフラストラクチャに求められる必要条件を明確にした. その要件とは,(1)サービスの公共性,(2)サービスの信頼性・耐障害性,(3)サービス拠点の識別性である.

 次に,これらの必要条件をもとに,運用基盤分析を行うモデルを定義した.このモデルは,(1)ユーザの視点からのサービス分析,(2)サービスの完全性分析,(3)サービス識別情報の分析の 3点から構成される.

 この分析モデルに基づいて,DNS の運用基盤分析モデルを作成した.その手法とは,(1)DNS 到達性の調査,(2)DNS 委譲ツリーの調査,(3)DNSサーバ識別情報の調査である.(1)の調査においては,世界各地からの DNS サーバの応答時間ならびに応答が得られる割合に関する調査を行った.(2)の調査では,DNS の委譲ツリーの完全性を調査することによって,DNS の正確性を調査した.(3)の調査では,DNS の個体識別情報ならびに運用情報を調査することによって,平常時における DNS サーバ毎のサービス範囲を明らかにした.

 これら調査の結果,DNS の運用基盤分析において個々の DNS サーバを単体を計測するのではなく,DNS 全体をひとつのシステムとして分析することができた.これによって,本研究にて提案したモデルの有用性を確認することができた.

 システムの障害をあらかじめ予測するためには,稼働中のインフラストラクチャ全体を恒常的に把握する手法が必要である.本研究では,大規模かつグローバルなインフラストラクチャの恒常的ならびに定量的な分析手法を提案し,その手法を用いて実際のシステムの分析を行い,評価した.これにより,本論文の定義に当てはまる大規模かつグローバルなインフラストラクチャであれば,運用基盤の分析を行うことが可能となった.その結果,大規模かつグローバルなインフラストラクチャのプロアクティブな信頼性と安全性を確立することに貢献できるようになった.

 以上の結果により,本研究において大規模かつグローバルなインフラストラクチャの運用基盤分析に有用なモデルを確立することができた.

連絡先 本文はこちらにあります。 (5.5Mbytes)
ダウンロードされる際は下記までご連絡ください。
関谷 勇司 (sekiya [at] sfc.wide.ad.jp )


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