慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科
MAUI Project
博士論文

[ English | Japanese ]
Back to Index Page

学位取得年度 1999年度
氏名 冨永 明宏 (TOMINAGA, Akihiro)
論文題目 ネットワークアドレスのグローバルかつ動的な割当と管理に関する研究
論文要旨 本研究では、中〜大規模なネットワークでIPアドレスの自動管理を行なう "Automatic Address Assignment Mechanism (AAAM)"を提案・実現した。AAAM は階層構造に基づいてIPアドレスを管理することで、高いスケーラビリティ、 管理・運用面からの正しいAuthorizationとPolicing、自律分散的な自動処理 などを可能にした。過去に類似研究はなく、本研究が初めて大規模ネットワー クにおけるネットワークアドレスの自動管理機構の基礎を築いた。

本論文では、最初に手動によるIPアドレス管理の現状を分析し、ホスト〜サブ ネット〜組織〜国〜全世界といった階層に沿って管理が行なわれていることを 明らかにした。次に既存のIPアドレスの自動管理機構を分類し、サブネット・ 組織単位での動的なIPアドレス割当や、自動アドレス付け替えなどが実現され ていないことを示した。これらの分析からネットワークアドレスの管理には、 ホスト単位、サブネット単位、組織単位、の3レベルの管理機能を組み合わせ る必要があることを示した。

まず第1に、ホスト単位でIPアドレスを割当・設定する機構としてIETFで標準 化されたDynamic Host Configuration Protocol (DHCP)を取り上げ、実装と評 価を行なった。フリーウェアとして公開した実装は、相互接続、大規模環境で の運用、長期運用などを通じて検証した。第2に、サブネット単位でIPアドレ スを自動割当し、設定するDynamic Network Configuration Protocol (DNCP) を提案した。DNCPでは、ネットワークトポロジーによって階層内の上下関係を 決定し、それに従ってIPアドレスを管理する「階層サーバモデル」を採用した。 第3に、組織単位でのアドレス管理を実現するAAAMを提案した。AAAMはDNCPと 改善版DNCP(DNCP+)を併用することで、サブネット群のIPアドレス自動設定と 組織単位でのIPアドレス管理を同時に実現した。DNCP+はサーバの上下関係を 論理構造に基づいて設定する「階層的グループ化」を導入し、安定性とスケー ラビリティを向上させている。AAAMは、IPアドレスの回収や自動付け替えだけ でなく、適切なシステム運用に不可欠なAuthorizationとPolicingの機構など も実現した。

実装はエミュレータによる仮想ネットワークと小規模な実ネットワークの双方 で動作試験を行なった。また、現実の中規模ネットワークをエミュレータ上に 再現し、手動割当よりも本システムの方がIPアドレス利用率が高くなることを 示した。ネットワークの追加や分断といった変化に対して、正常にアドレス管 理が継続されることも確認した。また、アドレスの割当・回収の所要時間を測 定し、アドレス管理が実用的な時間で機能することを示した。

これらの実験結果を総合し、ネットワークアドレスを階層的に管理する本機構 が有効であることを示した。最後に、管理アルゴリズムの妥当性、AAAMの処理 性能やスケーラビリティに関して考察し、世界規模のIPアドレス管理への適用 方法やその実現性について論じた。

連絡先 本文が必要な場合は下記までご連絡ください。
冨永 明宏
tomy@wide.ad.jp


Copyright 2000, MAUI Project
Last update:

研究会のホームページに戻る