慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科
MAUI Project
博士論文

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学位取得年度 2002年度
氏名 杉浦 一徳 (SUGIURA, Kazunori)
論文題目 携帯型計算機における有効な資源利用に関する研究
論文要旨

本研究では、現在の高度に洗練された資源を対象にユーザの目的に応じた計算機の資源管理をおこなうシステムアーキテクチャ:RMS(Resource Management Scheme)を構築した.本機構は,「性能」と「消費電力」という視点に基づいた計算機の状態監視をおこない,詳細な制御をユーザやアプリケーションに提供するものである.

近年,ネットワーク接続性の向上によりモバイルやユビキタスといった計算機環境に対する新たな要求が生まれ,それは(1)性能と(2)消費電力という視点でのデバイス制御が必要であることを意味する.モバイルおよびユビキタス環境では,計算機環境の動的な変化が前提となるため,適応性と協調性を持ったデバイス制御機構が必須である.我々の生活の中であたりまえに利用できる,普遍的で透過的な計算機環境を実現するためには,従来とは異なるソフトウェアアーキテクチャの確立が必要となる.現在の計算機環境は,一般的には階層化構造を持つEnd-to-Endモデルによるものであり,それぞれの階層を越えない範囲での資源管理がおこなわれている.しかし,新しいソフトウェアアーキテクチャにおいては,ユーザの要求という最上位層からデバイスという最下層までが協調的に作用しなければならない.

RMSの構築は,(1)デバイスへの対応,(2)アプリケーションへの対応,(3)ユーザへの対応,(4)開発者への対応という4つの目標を元におこなった.本機構では,ユーザやアプリケーションが洗練されたデバイスの機能を有効に制御する方法を考案した.実際には,ユーザは動作中のデバイスの調査と制御の権限を持つことで協調性を確保し,従来のデバイスの自律管理を超えた運用を可能とした.RMSの利用により,動的な利用環境の変化を伴う場合でも,性能と消費電力という両立しない2つの要素のバランスを考慮した資源管理が提供される.

本機構を利用したソフトウェア環境として,DVTS(Digital Video Transport System) およびDVoD(Digital Video-on-Demand)を実装し,本機構の有用性を示した.これらのソフトウェアは,プロセッサ資源とネットワーク資源を多く要求するストリーミングアプリケーションである.本機構との組み合わせによって,ジッタやパケット損失などにより性能を低下させることなく,従来比79%長の電池持続時間を得られた.また,本機構をSOHO(Small Office Home Office)環境のような小規模のサービスに利用することにより,ユーザの動向に応じてデバイスが質の異なるサービスをおこなえるため,資源消費を抑えたサーバの動作が実現できる.

本研究では,我々の計算機環境への要求に応じた資源管理をおこなう機構であるRMSを実現し,普遍的で透過的な計算機利用の実現方法を明らかにした.我々の生活と密接な関係を持つようになった計算機環境における資源節約機構は,エネルギー資源の限界が指摘される現代において画期的な技術である.

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uhyo@sfc.wide.ad.jp


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