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10/09/2002-3

狭い通りからスロープを降りる分かりにくい入り口をくぐり
階段で三階まで上がった最後の展示室
まず目に入るのは『デルフト眺望』です

なんのことはない風景画だのう なんて思いながら近づくと 画面はどんどん表情を変えてゆきます
雲の細部 川の向こう岸には船頭が働き 人々が歩きます

うーむ 見る角度でも違って見える... 後でじっくり見ることにしましょう

向かい合わせの壁には『ターバンの女』
近づいて行くと その全てが極めて美しく描かれています
画家は少女を この上なく愛していたのだろうな...
清楚でエロティック 神聖ですらあります
眼差し ほんのりと赤い頬 ひらきかけた柔かな唇 そして身に付けた物までが完全です

なんというか 2点とも恐ろしくリアルです
他の展示を眺めると レンブラントを筆頭に細密画オンパレード
(技術としてのリアリズムという文脈において)CGの御先祖様みたいな絵が並びます

いやはや 現代のアメリカがスーパーリアリズムの本拠地であるように 田舎もno?! jgfvuytd、ヲuiuyiys柎dゥxy...

オランダ王室秘密警察とCIAの検閲に掛かったようです この話題は避けましょう

これらに比べりゃフェルメールは技術的には粗っぽい
画面構成 光の捉え方 色々あるのでしょうが とにかく気違いみたいに精緻な訳ではありません

戻ってもう一回見てみましょうか

窓の外の陽が傾いてきたので部屋が少し... うわぁ! 絵の中の風景が変化してる...
雲間から差す光が搭の向うの家並を照し始めて... そんなバカな

もう一度見直すと 人夫達が微かに移動している様な気さえします
明かりの影響などではないようです

誰にも見られていないその片時 この国特有の強い海風が雲を流し 水面に映る搭がゆらめく

デルフトを出生の地とする画家の筆によってここに生き写された町は
300年の間 こうやって少しづつ時計を進めてきたに違いありません

記憶の奥底のほんの一瞬を描くために あの「失われた...」を編んだプルーストをして
「世界で一番美しい絵」と言わしめたことも 理解できなくもありません


振り返って少女を見つめていると 美しい表情の中に 何かどろっとした陰影を感じました
病的な眼差し 死の影 いや 誰もが心の底に潜ませている悪魔的な「なにか」を

近づいて つまり画家が筆を運んだ距離に立って眺めれば やはり完璧に美しい少女がそこにいます


おそらく無意識に 他ならぬこの愛する少女の中に影を見出し
自らの手でカンバスに塗りこめてしまった画家の その刹那の心情を思う

世界を見つめ 物を作ることの恐ろしさ 残酷さ


この少女は彼の娘であるらしいと 添付されたカードには書かれています


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