環境アセスメント


▲SFC周辺の自然。

 キャンパスのハード設計で最大の問題は「環境アセス」である。藤沢市は特に条例も厳しく、担当の方々はそうとう苦労されたと聞く。

 まずは「考古学調査」― その後正式に証明されたが、SFCの地下からは重要なものは何も出ない。でも、現在の法律では綿密な調査を実施しなくてはならない。そのための支出は膨大である。当時、発掘調査のアルバイト代がひとり一日一万円、必要な人数が常時百人、これが数百日にわたって続くと考えると、私のような素人の金銭感覚でいえば、SFCで必要な機器の予算が毎日百万円づつ消えてゆく思いだった。他大学の例を聞くと、専門の業者に委託して、短期間に調査報告書をまとめさせるような例も多いらしいが、天下の慶應義塾でそれはできない。OBにまでお願いして、最後まできちんとした調査を行った。

 現在、大学院棟の東側に新棟を建設中だが、SFCにはこれ以上の建物は作れない。藤沢市の条例で、キャンパスの50パーセント以上が「緑地」であることが決められているからである。

 「どうしてもっと高い建物にしなかったのですか」という質問も常に耳にするが、それもだめである。キャンパスの周辺から見ると、木々の梢から少しだけ頭を出したSFCの白い建物がのぞく。これがまさに「条例」だからである。条例の具体的文言は知らないが、要するに遠藤の植生にあった樹木の背後に見え隠れする程度の高さということだそうだ。「植生」というのがポイントで、キャンパスの周囲に数十メートルの大木を植えて、「建物は見え隠れする程度です」と言ってもそれは通用しない。

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