「SFCはキコクとオタク」

 開設二年目の外国語総合講座で、二期生全員の海外在住経験を調査したことがある。当時の「帰国子女」の定義はめちゃくちゃである。私の教え子のひとりは生まれてからずっとアジアやアメリカの現地校ですごし、むろん英語は完璧、家庭では日本語という環境にあったが、日本の教育制度でいう高校2年終了時に帰国したがために、当時慶應義塾大学を含めてどこでもあった「受験前2年以上海外在住」という帰国子女の権利を失った。

 そんなわけで、「われわれが教えている学生たちは、どんな形の海外在住経験を持っているのだろうか」という単純な動機の調査だったが、当時ですでに一年以上の海外滞在経験者(そのほとんどは数年以上の滞在)が26%を越え、滞在国数は40ヶ国…外国語教育を担当する言語コミュニケーション研究室としてもまさに絶句、の調査結果であった。

 生協前のテラスに白いテーブルと椅子が置かれているが、あれも帰国子女と深いかかわりがある。

 発足当初は、例の東屋のようなものしかなかった。ところが、見ているとアメリカ帰りの帰国子女らしき学生たちは平気でコンクリートの地面の上に座ってしまう。日吉・三田ではあまり見かけなかった光景である。それに影響を受けて、一般の学生まで座り込む。それも女子学生までGパンであぐらという、父親の世代の教職員としてはとうてい見ていられない光景である。来客も多いキャンパスなので、だいいちみっともない。かといって、学校名で「皆さん床に座るのはやめましょう」と張り紙を出すわけにはゆかない。そのほうがもっとみっともない。そこで事務長や総務課長が相談して、テーブルと椅子を設置したというわけである。イタリア製のけっこう高額なものである。

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