初年度のさまざまな議論とトラブル

 「多彩な入学者選抜方式」というのは、いまでは全国的に常識となっているが、AO入試の波紋はむしろ入学した学生たちの間で大きく広がった。一口にAO入試とはいっても、スポーツの得意な学生から、文科系の一芸・一能の若者までさまざまである。彼らの多くは、私たち教員から見ればそんなことはないのだが、大学入試を経験していないだけに、英語や数学にコンプレックスを持っている。一方、秋学期になると、今度は母国語のように英語を話し、キャンパス内でも英語で談笑しているようなグループが入ってくる。文化も服装や雰囲気も全く違う。

 塾内進学者の層も多様だ。塾には成績上位者しか大学に進めないという伝統も、逆に上位者がごっそり他大学に行ってしまうという傾向もない。成績優秀な学生もいれば、受験がないぶんスポーツその他の諸活動にまい進した、AOに負けない若者もいるし、大器晩成型で、高校時代を遊びまくったり、のんびりとすごしたタイプもいる。ここに日本全国から集まったさまざまな一般入試の若者が加わるのであるから、まさに不思議な世界が出来あがる。

 むろん日吉・三田・矢上でもこうした多彩な文化が交錯しているのだが、SFCのように閉ざされた空間での濃密なコミュニケーションというものは少ない。気のあった仲間を見つければそれで十分であるが、SFCではそうはいかない。特に初年度の場合、グループをまとめる上級生もなく、やがてはトラブルもおきる。

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