自然な融合

 というわけで、初年度は学生間のトラブルも多く、AO入試賛成・反対のメイルだけでも、プリントアウトされた交信記録は膨大なものである。ところが、開設後一年もたたぬ間に、こうしたディスカッションはすっかり姿を消してしまった。議論自体がばかばかしくなったのか、学生たちが大人になったのか、そのあたりはよくわからないが、イベント企画やサークル運営の中心になっている学生たちに聞くと、「みんなそれぞれ、違ったグループの人間もいいやつだ、と思い始めたからです」とのこと。

 何かというと「塾」を振りかざすと思い込んでいた塾高の連中が意外とそうでもない、英語が話せるだけと、多少のコンプレックスとねたみ半分でつきあわなかったクラスメイトが、実はむこうもこちらにコンプレックスを持っているとてもいい友達だとわかった、情報処理やインテンシブの授業中、いつもすみでひとりでいる暗いやつだ、と思いっていたのが、本当は明るくて、とてつもない特技を持っていることを知った…

 まあ、人生、人との出会いというのはどこでも同じなのだが、そうした出会いを導く「先輩や伝統」のないキャンパスはとにかく人の結びつきに時間がかかる。

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