慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科
MAUI Project
博士論文

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学位取得年度 2011年度
氏名 久松 剛 (HISAMATSU, Tsuyoshi)
論文題目 MUSE Stream: Adaptive Overlay Network for High-Bandwidth Streaming
(MUSE Stream: 広帯域ストリーミングを実現する適応型オーバレイネットワーク)
論文要旨

全てのユーザが対等に,かつ低コストでコンテンツ流通を行える形態としてオーバレイネットワークによるアプローチが注目されている.しかし多くのオーバレイネットワークを用いたストリーミングシステムは低帯域な配信サービスが前提となっており,コンテンツの広帯域化が達成されていない.

既存のオーバレイストリーミングシステムを用いた検証を行い,受信帯域幅を制限している要因として (1).配信網全体のスケールだけを優先した網設計 (2).サービスの堅牢性の過尊重 (3).静的で画一的な欠損パケットのリカバリ処理の3点を発見した.

得られた知見を元に,受信帯域幅を最大化するオーバレイストリーミングOverlay Network Controlled by MUltiple SEssions for High-Bandwidth Streaming (MUSE stream)の提案を行った.検証結果より転送帯域幅の増加が見込め,可用性やスケーラビリティの高いMultiple-Tree型を基本とした,Adaptive Hybrid Topologyという配信網について述べた.Adaptive Hybrid Topologyでは,欠損パケットの再送要求ノードを選択する際に,パケットの保持確率を得るための「血縁距離」という論理値を提案した.血縁距離,RTT,階層を指標としたRedundant Node Selection (RNS)の提案を行い,効率的な欠損パケット再送を実現する.受信パケット数の変動数に基づいたストリーミング受信状態監視を行うReception Packet Fluctuation (RPF)の提案と,各受信者のネットワーク状態を監視し,受信者間のネットワークの差異による受信帯域幅の全体的な低下を防ぎながら欠損パケットの再送信リクエスト数を動的に制御するJoin and Retransmission Control (JRC)の提案を行った.これにより,一意にパケット欠損率が判断できないオーバレイストリーミングシステムにおいて,網全体の配信品質の向上を実現する.

MUSE streamの実装評価を行った.先ず始めにシミュレータを用い,JRC,RPF,RNSの各アルゴリズムに関して正当性を証明した.受信者ネットワークに差異がある環境をシミュレータによって作成し既存研究との比較を行い,受信帯域幅を約20 %拡大した.また実ネットワークでの検証としてPlanetLabを用いた既存研究との比較を行った.世界中に分散するノード300台を用い,アメリカ,ドイツ,日本のそれぞれを起点とした実ネットワークにおける検証を行い,既存研究より平均帯域幅が最大15 %向上したことを確認した.

本研究によりあらゆるユーザが安価に1対多型の広帯域ストリーミングサービスを利用することが可能となり,結果として様々な環境に属した全てのユーザが対等に高品質なストリーミング送受信を行うことを可能とした,新しいコンテンツ流通の実現に繋がる.

キーワード
1. 実時間配信,2. オーバレイネットワーク,3. P2P, 4. マルチメディア,5.インターネット

連絡先 本文が必要な場合は下記までご連絡ください。
久松 剛 ( ringo at sfc.wide.ad.jp )


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