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フリフリ

日頃、読む本の9割近くがミステリィのため、たまに人が死なないような、読み味が爽やかな作品が読みたくなる。そこで、ちょっと前に読んだ石田衣良氏の「スロー・グッドバイ」。なかなかおしゃれにまとまった短編集。

一番の白眉は「フリフリ」という短編。世話好きの友達カップルに何度も女の子を紹介されてちょっと辟易している主人公が、紹介された同じ感情を抱いている女の子と、友達カップルの前で付き合っている"フリ"をするというストーリ。付き合っていれば、次の相手を紹介されないし、面倒くさいことも無い。そんなちょとした悪戯心から始まる二人の心の機微と、関係の微妙な変化を繊細に描いている。
タイトルの"フリフリ"は、付き合っている振りをしている二人が「バイバイ」の変わりに別れ際にする、手首を2回折ってする挨拶のこと。二人の付き合いが「恋人の"フリ"だよ」という、二人だけのサイン。この"フリフリ"を、実に効果的に用いる手法が秀逸。

シンプルなストーリと、ポップだけど繊細な描写。短編集としても綺麗にまとまっている。

コメント (2)

森博嗣先生もそんなことをMORIlogの中でハチクロについて言ってらっしゃいました。石田衣良いいですね。そういえばここ2冊、森博嗣先生の新刊人死にがありませんよね(ばらしてよかったです?)。

saikawa:

平易な日本語でポップな感じを出すというのも、なかなか難しい表現ですよね。
森博嗣はミステリィではない何かを創作対象にしているように感じます。そういう意味では死者が出ないというのも象徴的ですね(スカイクロラシリーズの場合死者が出ているかどうかの判断が難しい気もします)。

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2006年09月07日 20:09に投稿されたエントリーのページです。

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