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新・エースをねらえ

というわけで、前回の前フリをきちんと踏襲して、今回は「エースをねらえ」である。

もちろん、非常に有名なテニス漫画であり、ほとんどの方がご存知のことだろう。テニスの名門、西高校で、華麗なプレイスタイルと日本人離れした容姿の「お蝶夫人」こと”竜崎麗香”(イニシャルはRR)に憧れ、テニス部に入部した”岡ひろみ”が、新任コーチの”宗方 仁”(イニシャルはJM、我らが指導教官と同じである)に見出され、テニスに打ち込み、大きな試練を乗り越えて世界のトッププレイヤーとなっていく物語である。

前から好きではあった。宗方コーチの異常に長い足や、バラを背負って登場するお蝶夫人、岡のことを好きになる男子テニス部主将 兼 生徒会長の"藤堂 貴之"(イニシャルTT)等、非常に個性的で魅力溢れるキャラクタと、テニスを通して人間の成長を描くストーリは特筆に値する。

しかし、しかし。つい先週、ふと再読してみると、なんということか(ががーん)!!もう、とにかく凄いのである。人生に必要なもののほとんどすべてが詰まっている。まさに、哲学書なのである。

ご存知のように、途中で宗方コーチは絶命されてしまう。このシーンはもう、涙無しには読めないのである。自分の死期を知った上で、自分のテニスを教える相手を探し、やっと見つけて、これから花開くという時に死んでいく宗方。最後まで育てられない無念さ。それを押して、「俺の死が(岡が成長する)チャンスだ」と、親友を信じ、託し、すべてを赦して死んでいくその生き様。断筆は、「岡、エースをねらえ!」ですよ。どんな精神力だ、宗方。かっこよすぎるぞ。もう、蜘蛛の模様の着流しも、寝タバコも許せてしまう。

その死後、ショックでテニスを離れてしまった岡が再び再生していく過程。岡を取り囲む人々の苦悩と努力。素晴らしい。特に、宗方の親友、桂コーチ。お坊さんだけあって、台詞に含蓄がある。「勝に不思議の勝あり。負に不思議の負けなし」なんて説法だよ。
「スポーツじゃあ『勝つと自信がつく 負けると勉強になる』っていうんだ。どっちもいいものなんだ。ただし勝ちざま負けざまってものがある。悪く勝ちゃ慢心する 悪く負けりゃ卑屈になる」なんて、27歳の台詞では無い。

そうなのだ。この作品に登場するキャラクタは、やたらに立派なのだ。めちゃくちゃ努力家なのだ。凄い精神力なのだ。お蝶夫人は、20歳前にして、既に「『わたしがやる』とか、『わたしにならできる』とか、いつも自我は表面に出る者は頂点には登りきれない。天才は無心なのです」という悟りともとれる言葉を岡に送る。この言葉の根拠が、お父さん(日本庭球協会理事)が落ち込んでいる姿を見て、「私が強くなって日本テニスを支える」と宣言したことによっているのである。小学生だぞ!麗華。なんでそんなに立派なのだ。

というわけで、本当に枚挙にいとまが無い「エースをねらえ!」。未読の方はハンカチを持って、是非。
ちなみに、1巻で藤堂は岡を自転車(青春である)で送った後、詩吟を詠いながら去っていく。何で?

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2004年12月07日 15:20に投稿されたエントリーのページです。

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