子供の頃、家にある器で、とても恐ろしいものがあった。
それは、お正月等に出てくる5つくらいの小皿をセット出来る大きな台座のようなもので、回転する機構が備わっているものであった(つまり、中華料理店の回転テーブルと同様の効果がある)。
嫌いだったのは、これの下部に備わっているオルゴールで、テーブルをある方向に回転させるとネジが巻かれ、ゆっくりと音を出しながら回転するというギミック。
これが嫌でたまらなかった。
まず、制御できない点が我慢ならない。ネジが巻かれたら最後、ゆっくりと、傲慢に音を出しながら回転し続ける。こちらの意思で止められない。そこが気に入らなかった。
そして、ネジが緩まっていくにしたがって、音楽は間延びしていき、何時止まるとも無く、緩慢に惰性で動くその様子は、強烈に死をイメージを想起させ、本能的に受け付けなかった。
先日、久しぶりに実家に帰ったら、その器があった。何のことはない、ただの器であった。
もう、怖くない。
なんだか少し、悲しい感じだ。