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リヴィエラを撃て

大学生だったころに読んだ高村薫の傑作「リヴィエラを撃て」。

もう三回くらい読み返していたのだが、最近記憶が薄れてきた(最近読んだ人と微妙に話しが食い違う)のでもう一回読みたいと思っていたが、我が家の本砦の前に捜索が頓挫していた。
仕方が無いのでもう一度買って読み直している(笑)。

大丈夫、この本にはそれだけの価値がある。読み終わった暁には”職場用”として利用可能だし、問題無い。

物語はIRA出身の元テロリストのスナイパー、ジャック・モーガンを軸に、幼少時代の親友である天才ピアニスト(兼、国際スパイ)のノーマン・シンクレア、MI5やMI6等の英国諜報部、CIA、そして日本外務省が複雑に交錯しあいながら、白髪の東洋人スパイ『リヴィエラ』の秘密に迫っていくという重厚な作品。

まず、プロットが素晴らしい。そして細部まで精緻に書き込まれた描写と、人間関係の機微がそれを引き立てる。ジャックの恋人リーアン、シンクレアとの交流や、シンクレアの友であるダーラム公とその妻レディ・アンの友情と恋愛感情と駆け引き、それぞれの所属する組織と立場と、それを超越した感情とのせめぎあい等が書き切られている。

テロリストとして、スナイパーとして殺人を犯し、成長したジャックが、シンクレアの正体を知ってから彼に出会うシーンは何度読んでも胸に迫る。

「私は、君の許しは乞わない。君をずっと愛している」
「僕も今は殺人犯です。サー・ノーマン、あなたのことは生涯忘れません・・・」
「サーは要らない・・・。私も君を忘れない」

短い逢瀬の後、ジャックがいえなかった言葉、「サー・ノーマン、僕は生まれ変わりたい。いつの日か、どこかであなたと出会いたい。そのときは、ピアノとウィスキーとバラの日々だ。そのときは、僕はテロリストではなく、あなたはスパイではない。」、そして万感の想いを込めた「ノーマン!」と叫ぶシーンは、作品中屈指の名場面である。

大人になったらまず読むべき作品の一つ。

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コメント (2)

kiyo:

相変わらず、
ついつられて読みたくなってしまうブログですね。
落ち着いたら早速本屋さんに行ってみます。
ちなみに先日は「おかざきまり」には巡り会えませんでした。

それにしても、地震が来ないことを祈ります。

saikawa:

いやもう、直にでも読んだ方が良いって。人生に必要な大切なことが詰まってるから。

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2005年06月18日 21:27に投稿されたエントリーのページです。

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