F1GPの今期最終戦、ブラジルグランプリ。
優勝したのは地元ブラジル出身のマッサ、そしてアロンソは2位でフィニッシュし、二年連続のワールドチャンピオンになった。
あえて言おう。だから何だと。
このレースの主役は、間違いなくシューマッハだった。予選では圧倒的なスピード(V8マシンでV10時代のレコードを塗り替えるタイム)を有していながらファイナルラウンドはメカニカルトラブルで出走できず、10番グリッドからのスタートとなるも、決勝では、抜群のロケットスタート。
一気に6番手まで順位をあげたが、スタートの事故によってペースカーが入った。レース再開後、ライバルのルノー・フィジケラを第1コーナでパスするも、事故の破片を拾ったのか、左リアタイヤがバースト。万事休すかと思ったが、シューマッハはそのマシンをピットまで何とか導き、タイヤを替える。この時点で周回遅れの最下位。
しかし、ここからが凄かった。
毎周回予選タイムアタックのような鬼神の走り。近代F1とは到底思えない圧倒的な速度差で並み居るマシンをどんどん抜いていく。時々、メカニカルトラブルのようなトラクションロスの挙動を見せるものの、その速度は衰えない。
気づいたら、また6位。前を走るのはまたもやフィジケラ。ぴたっと後ろについてプレッシャをかけ、因縁の1コーナでフィジケラのコースオフを誘発させる。そして、前を行く、来季から自分に代わってフェラーリに乗るライコネンを射程に捉えるのである。
ものの数周でテイル・トゥ・ノーズに持ち込むと、ホームストレートエンドからの第1コーナへの飛び込みで一気に勝負を掛ける。スリップから一気にイン側へ。左はウォール、右はライコネンのマシン。幅はちょうど一台分しか隙間が無い。そこにマシンを入れた。
久しぶりに鳥肌が立った。これぞF1。これぞ強いドライバーのレース。
シューマッハのマシンは見事な放物線を描いて立ち上がっていく。ライコネンもフェアなブロックラインで立ち上がるも、イン側のシューマッハには及ばない。本当に一台分、数ミリの空間をすり抜けて前に出る。
そのまま4位でフィニッシュ。
最後の最後まで、F1がスポーツであり、エキサイティングなレースであることを全視聴者に伝えてくれた。F1史上、もっとも強かったドライバーらしい、見事なレースだったと思う。